大学生時代に学んでから、また最近使うことがあったので、復習代わりに記述していこうと思います。
無線工学とか電波工学とかで使用する式です。
レーダー方程式とは
レーダーで受信する電力を計算するための式です。
電磁気の理論を用いて導出できて分かりやすいので非常に重要な式です。
レーダーがどの距離にあるターゲットを検出できるのかや、逆にターゲットを決めたうえでアンテナ形状を決めるために使う式です。
受信電力が、送信電力
・アンテナ形状()・距離・ターゲットの形状の掛け算で決まるというめちゃくちゃシンプルな式ですね。
波の振る舞いを表した式では無い
よくある間違いとして、電磁波の振る舞い(伝搬)について記述したものでは無いので、途中の電力は計算できないので注意が必要です。
こうした電力を求めたい場合は、波の振る舞いについて考慮する必要があるので、モーメント法とかレイトレーシングを用いて簡易的に計算しましょう。
厳密に言えば、マクスウェルの方程式から電磁波の伝搬式を解かなければならないのです。
途中の電波が伝搬する仕組みはどうでもいいから、送信した電力がどれだけの大きさで返ってくるかだけに注目することで得られる式というわけです。
導出してみる
導出するためのモデル図は下のような感じです。
アンテナから距離Rに物体がある状況ですね。
導出前に下の条件が成り立つとします。
- ターゲットは点とみなすことができ、形状は考えなくてよい
- ターゲットによって電波が吸収されることはないこと
まず、 電磁波をどの方向にも球面上に広がって放射する等方性アンテナについて考える。 このとき、ターゲットに入射する電力の大きさは、球面上に広がるので、送信電力を球の面積で割ることで求まり、下式で与えられる。
で入射した電波のうち、ターゲットによって反射する電力の大きさは、散乱断面積との積で表され、下式で与えられる
反射波を距離Rだけ離れた受信アンテナに受信する電力は、電磁波は入射時と同じく球面上に広がるので下式で与えられる。
受信アンテナに到達する電力のうち、受信できる電力は有効開口面積との積で決まるので、受信電力は
実際には、等方性アンテナではなく、特定の方向に電波を送信するアンテナを使用するのでその利得を考慮すると、
となる。
仮定の意味
ターゲットの形状
まずは、ターゲットの形状についての仮定です。
電波が反射する瞬間、ターゲットの表面では波の位相が揃います。
高校生などで習うホイヘンスの原理ですね。
物体の形状を考えると、位相が揃う面っていうのは物体の一部だけになって、反射が複雑になるので散乱断面積では表現しきれなくなります。
たとえば、同じ物体であっても近いと一部からしか反射しませんし、遠くにあると全体から反射します。
物体との距離によって物体の反射特性が変わり、求めるには複雑な計算が必要となります。
(散乱断面積は形状を考えなくて十分遠い位置で物体の形状を考えたときの値となります)
なので、計算を簡単化するための仮定です。
電波の吸収
次に、電波の吸収です。
電波が物体に当たって反射するとき、表面で反射するわけではなく物体に一旦吸収されてから、大部分が入射した方向と同じ方向に返ります。
下記のページが参考になりました。
実際にはこの吸収の際に、電波の電気エネルギーが熱エネルギーなどに変わるのでその分反射するエネルギーが減ります。
吸収率は室温などでも変わるので、計算できないので考えないことにしたわけですね。
なぜ2Rで距離の2乗では無いのか
私も最初は不思議だったのですが、電波が往復すると考えて2Rと考えるのは誤りのようです。行きと帰りで電波は同じことが起きると考えるのが正解ですね。
レーダー方程式では、電波は物体に反射するとき、表面でそのまま跳ね返るのではなく、一旦電波は物体に吸収されてから、吸収したエネルギーを全方向に再放射すると考えます。
(全方向では無く、入ってきた電力がどの程度入射方向と同じ方向に返すかを示したものが散乱断面積です。)
仕組みとしてはアンテナと同じように電力が入力されてそれに応じて電波が放射されるのと同じですね。
なので、行きがなので、帰りもとして、それらの積である距離の4乗に反比例することとなります。